BUCK-TICK TOUR「PARADE」in 沖縄 2008年1月20日(日)ナムラホール
BUCK-TICK / AGE of PUNK

 2008年1月20日。BUCK-TICKの『TOUR PARADE』が、本当の意味で完結した。すでにあの9月8日からも5ヵ月近くが経過しようとしているし、『天使のリボルバー』発表に伴う高密度な全国ツアーも、3本の追加公演を含めて昨年末には終了している。その時点でBUCK-TICKの2007年の活動はすべて終わっているわけだが、実は彼らにはひとつだけやり残したことがあった。本来であれば昨年7月15日にナムラホールで行なわれることになっていた『TOUR PARADE』の最終公演である。

 当時、大型台風接近の影響でコンサート機材を運搬するフェリーの現地到着が不可能となり、断念を余儀なくされた沖縄公演。結果的にはそれから半年以上を経て『TOUR PARADE』の7番目の夜が訪れることになったわけである。それが、7月15日にその場にいるはずだったファンはもちろん、BUCK-TICKのメンバーたちにとっても待望のステージだったことは言うまでもない。

 1月20日の沖縄地方は、快晴とまではいかないものの好天に恵まれ、初夏を思わせる暖かさ。結果的には降らなかったようだが、この日の東京地方の天気予報は雪。約20度の気温差を飛び越えて沖縄に到着した一行を待ち受けていたのは、そんな陽気をはるかに上回る熱気だった。

 午後6時。ほぼ定刻に暗転したナムラホールの場内に鳴り響くのは、軽快なマーチング・ドラムの響き。AGE of PUNKの登場だ。「行くぞ、沖縄!」との第一声を合図に、持ち前の、小細工のないストレートなロックが爆裂し、冒頭から畳み掛けるように次から次へと爆発力を持った楽曲が繰り出されていく。

 「やっと来れました! 今宵、東京は雪らしい。逃げてきました!」

 すでにフロアを埋めているオーディエンスは、そんなASAKIのMCに同調するように歓声を上げ、「世界一、派手な夜にしたいと思います」という言葉に、さらにその音量を上げる。AGE of PUNKのステージは、そのまま一瞬たりともスピードを緩めることなく続き、最後はASAKIの「夢の続きを叶えちゃって、よろしいでしょうか?」というリクエストに応えて登場した今井寿をまじえての「PHYSICAL NEUROSE」で、前傾姿勢のままゴールを迎えた。

 そしてAGE of PUNKの演奏終了から約25分。冷房を強めなければならないほどに熱の充満した場内がふたたび暗転すると、聴こえてきたのはお馴染みのオープニングSE。オーディエンスはまさに夢の続き、パレードの続きへと誘われていく。

 まずフロアを揺るがしたのは「Baby, I want you.」の、欲望と興奮を抑えきれない鼓動を思わせるビート。会場のサイズに不釣り合いなほど巨大なミラーボールがゆっくりと回転し、艶やかな黒装束に身を包んだ櫻井敦司の挑発に、沖縄は歌声を重ねて応戦。すると、そのまま場面は「ICONOCLASM」へと一転。惜しみないキラー・チューンの連発に、観衆が狂喜しないはずもない。

 「沖縄に来るのに、半年かかりました。そのぶん、今日は楽しみましょう!」

 櫻井がそんな挨拶に続いて「狂わせてくれ!」とうめき声をあげると、炸裂したのは「CREAM SODA」。ここからが、半年前までとは違うところだ。6月から7月にかけて行なわれていた公演でも「スパイダー」や「モンタージュ」が“新曲”として先行披露されていたことを憶えている読者は多いはずだが、あのときと現在との最大の違いは、『天使のリボルバー』という愛すべきアルバムが世に出ていて、それをステージ上の5人とすべてのファンが体内で消化した状態にあるということ。この曲を皮切りに、立て続けに披露された『天使のリボルバー』からの楽曲たちは、ナムラホールの室温をさらに上昇させることになった。櫻井が「東京では雪らしいので、沖縄にも雪を降らせたいと思います」と語りながら歌い始めた「Snow white」にしても、真冬の風景を演出しながらも確実に“熱”を伝えていたし、「さあ、踊ろう!」という号令とともに「スパイダー」の疾走が始まり、続けざまに「絶界」のイントロが掻き鳴らされると、まさに季節が夏に逆戻りしたかのような錯覚をおぼえずにはいられなかった。

 ステージはその後も、櫻井の口にした「21歳のBUCK-TICK」という象徴的な言葉とともに披露された「RENDEZVOUS〜ランデヴー〜」や、9月8日の夜を境に“特別な曲”になった印象の強い「Alice in Wonder Underground」をはじめ、あくまで『天使のリボルバー』を基調としながら進んでいく。そしてクロージングに据えられたのは「RAIN」。この曲を歌う前に、櫻井はこんな言葉を客席に投げかけた。

 「ありがとう。皆さんにとって今年が良い年になりますように。これでパレードは終わりになりますが、またどこかで会いましょう」

 しかしもちろん、パレードは表向きには終わってしまうが、BUCK-TICKの行進がそこで完全停止してしまうわけではない。そんなことを無言で証明するかのように、彼らは必要以上の時間的空白を挟むことなくアンコールに応えてくれた。が、その1曲目、ステージ上に櫻井の姿はない。そして今井が、さらなる“夢の続き”の幕開けを告げる。

 「スペシャル・ゲスト。てゆーか、ASAKIちゃんなんだけど」

 なごやかな空気のなかで転がり始めたのは、そのASAKIをステージ中央に配しての「Sid Vicious ON THE BEACH」。考えてみれば、この曲が日本国内でいちばん似合うのは沖縄なのかもしれない。そして、櫻井の帰還を経て幕を開けた「JUPITER」のまばゆさに目を細め、「スピード」の疾走感に身をまかせているうちに、“半年遅れの7番目の夜”は本当に幕を閉じてしまった。

 「また会いましょう!」

 投げキッスとともに、櫻井は最後の最後、ふたたびそう呼びかけた。彼らが“パレード”という言葉を掲げてステージに立つことは、もうないのかもしれない。が、聖者たちの行進はまだまだ続いていくのである。
text :増田勇一/photo:MASA