BUCK-TICK TOUR「PARADE」in 福岡 2007年6月23日(土)Zepp Fukuoka
BUCK-TICK / 遠藤ミチロウ

 6月23日、『TOUR PARADE』は福岡にて三番目の夜を迎えた。ほぼ定刻に暗転したZepp Fukuokaのステージにまず姿を見せたのは、遠藤ミチロウ。伝説的バンド、ザ・スターリンを率いていた時代から現在に至るまでの長い歴史について、この場で簡潔に説明することは難しい。が、何よりも重要なのは、この人物が現在もさまざまな表現形態を用いながら精力的な音楽活動を続けているということであり、ギターを掻き鳴らしながら吐き出される声そのものが、彼自身が唯一無二の存在であることを物語っているという事実である。

 この日は山本久土(g)、茶谷雅之(ds)を伴ってのトリオ編成での演奏。その音楽スタイルをアコースティック・パンクと形容するのは間違いではないはずだが、耳にやさしいシンガロング系の楽曲など想定していたら、その衝撃度に腰を抜かすことになる。ハード・ロック創成期を思わせるようなプリミティヴな野性のグルーヴに、地面から吹き上げてくるかのようなスクリーム。そして心臓をえぐるような言葉が連なる歌。「BUCK-TICKの、いちばんイヤらしい歌を選んだ」と語って笑いを誘いながら披露された「囁き」ももちろん素晴らしかったが、「天国の扉」の圧倒的な濃密さは、ボブ・ディランやガンズ・アンド・ローゼズのヴァージョンで聴き慣れてきたこの曲の像を忘れさせるほどに強烈だった。

 しかし、この夜最初のクライマックスは、同楽曲に続いて披露された「ワルシャワの幻想」で訪れた。なんと、今井寿がギターを抱えて登場したのである。終演後、実はその場で緊張を味わっていたことを認めていた今井だが、その潔い暴れっぷりが、観ていて痛快そのものだったことは言うまでもない。

 そして午後7時21分、短いインターヴァルを挟み、まるで場内が充分に暖まったのを見計らったかのようにしてBUCK-TICKのステージがスタート。今回のツアーは週末のみに公演の組まれた緩やかな日程のものだが、それゆえ演奏する側にとっては、ツアーならではの流れや波に乗りにくいという部分も少なからずあるはず。しかしこの夜、僕が強く感じたのは、ツアーそのものが加速度をつけながら転がり始めているという事実だった。“流れが良い”なんて陳腐な言い方では片付けられないほどに、楽曲同士の相互関係が機能性を高め、時間経過の体感スピードがすさまじく速くなってきているのだ。本当に大袈裟じゃなく、僕にはこの夜の彼らのライヴが、あっという間の出来事だったかのように感じられた。

 が、もちろんそうしたスピード感で全体を貫きながらも、重厚さや多面的なドラマ性を失うことがないのが、現在のBUCK-TICKのライヴにおける特筆すべき点のひとつだろう。すっかり新たな定番チューンへの道を歩みつつある「RENDEZVOUS〜ランデヴー〜」のまばゆさも、櫻井敦司が黒いジャケットで顔を覆いながら歌ってみせた「ROMANCE」の宗教的ともいうべき神秘性も、さらには「皆さんが生まれる前の曲です」とのMCに導かれて始まった「MY EYES & YOUR EYES」の懐かしさと新鮮さの同居する感触も、そうしたドラマを成立させるうえで欠かすことのできない要素だった。

 この夜の最後の風景は、ステージを去り際に樋口豊が見せた投げキッスと、オーディエンスの満足そうな笑顔。こうして『TOUR PARADE』は、折り返し地点へと向かうことになった。さて、次回の公演以降はどんなサプライズが飛び出すことになるのか。セッションは? レアな楽曲の披露は? そして彼ら自身は、何に驚かされることになるのだろうか?


text :増田勇一/photo:MASA