BUCK-TICK TOUR「PARADE」in 名古屋 2007年7月1日(日)Zepp Nagoya
BUCK-TICK / 清春

 『TOUR PARADE』の第4夜/第5夜は、このツアーにおける唯一の連夜公演。メンバーたちは大阪公演の熱狂(とBALZACとのなごやかな宴)の余韻が残るなか、7月1日の午前中に名古屋に移動。9月から始まる全国ツアーではこうした時間の流れがアタリマエになってくるわけだが、こうした場面に出くわしたときに痛感させられるのが“ステージに立つプロフェッショナルたち”の集中力の素晴らしさである。テンションを保ちながら、しかも自分自身のスイッチを自在に切り替えられること。それはツアーの日常に身を置く人たちにとって必須の才能のひとつと言っていいはずだ。

 7月1日、午後6時。まさに定刻にZepp Nagoyaのステージに現れ、客席からの視線をひとりじめにしていたのは清春。いきなり新曲2連発という大胆な幕開けながら、滑り出しは上々。彼がギターを掻き鳴らしながら歌う姿にはまだ免疫のない観客も少なからずいたはずだが、メロディに絡みつくようなあの歌声は、そこに居合わせたすべての人たちにとって馴染み深いものであったはず。それを裏付けるように、「忘却の空」「少年」と続いた終盤の展開には、フロア前方で清春の一挙手一投足を見逃すまいとする人たちのみならず、場内を埋め尽くしたオーディエンスの大半が“揺れて”いた。

 そんなグルーヴとエモーションの激流の末に用意されていたクロージング・チューンは、「JUST ONE MORE KISS」。グラム・ロックとニュー・ウェイヴの匂いを併せ持った清春流の解釈によるこの曲が、室温をさらに上昇させることになったのは言うまでもない。話は前後するが、そのクールさに対しては、のちに櫻井敦司もステージ上からエールを贈っていた。また、清春のステージ中に披露されたもうひとつの極上カヴァー・チューン、「TATTOO」(原曲は中森明菜のヒット曲)が、8月22日に発売される彼のニュー・シングルであることも付け加えておきたい。

 そんな清春の熱演を経て、BUCK-TICKはこの夜もあらかじめエンジンの温まった状態でステージに登場し、一気に放熱を始めた。神々しい光を浴びながらのオープニング、そこからうねるようにして艶かしき官能の世界に飛び込み、さらには破壊的な流れへと転じていく序盤の展開のスリリングさには、回を重ねるごとに磨きがかかっている。敢えてここで具体的な曲名を記さずとも、こうした形容から冒頭3曲の正体を察知できるファンも少なくないはずだ。

 「楽しんでいってください。俺は、楽しみます!」

 そんな言葉を発すると同時に、櫻井はさらにアクセルを踏み込んでいく。そしてBUCK-TICKのライヴは、この夜もさまざまな風景と豊富な起伏を伴いながら、圧倒的な体感スピードで転がっていった。

 ライヴ全体を通じて改めて僕が感じさせられたのは、BUCK-TICKというバンドの稀有さだ。たとえば清春は現在、ソロ名義で活動している。バンド・サウンドを後ろ盾にしてはいるが、彼自身と完璧な演奏陣との関係は、“プロフェッショナルなシンガーとバック・バンド”のそれに限りなく近い。それは清春が“シンガー”として絶対的な存在であるからこそ成立している図式だといえる。そしてBUCK-TICKもやはり、櫻井敦司という絶対的存在を擁している。が、同時にこのバンドにはすべてのメンバーが絶対的に不可欠であり、各々がプロフェッショナルだからこそ“バンド”であり続けているのである。考えるまでもなく、もうずっと前からわかりきっていたことではある。が、こうして長年続いているバンドだからこそ、僕らにもその稀有さについてアタリマエのもののようにしか感じなくなってしまっているところが、少なからずある。そこで僕にこんなことを思い起こさせてくれたのは、実は“バンド”というものについて高い理想を持っているからこそ安直に“バンド”を名乗ろうとしない清春という人物が、この夜、BUCK-TICKに対して発していたリスペクトの視線そのものだったのかもしれない。

 アンコール時、櫻井はこのツアーでは初めてのメンバー紹介をした。その声の響きが、とても晴れやかで誇らしげなものに聞こえた。そして、「皆さんの夢に乾杯!」という言葉とともに、第5夜は最終場面へと向かっていった。『TOUR PARADE』は、こうして終盤へと突入していった。


text :増田勇一/photo:MASA