BUCK-TICK FEST「ON PARADE」
2007年9月8日(土)横浜みなとみらい 新港埠頭特設野外ステージ

 台風9号が関東地方を直撃した影響で、一時は開催そのものが危ぶまれていた『ON PARADE』。しかし9月8日、横浜は“超”が付くほどの好天に恵まれ、まさに真夏の太陽の下で約8時間にわたる饗宴が繰り広げられることになった。

 午後1時、まずステージに現れたのは清春。しかもそこで彼は、いきなり櫻井敦司を呼び込んでみせた。まさに“真夏の白昼夢”ともいうべきショウの幕開けは、2人のデュエットによる「JUST ONE MORE KISS」。予想の範囲を超えたゴージャスな滑り出しに、早くから会場に詰め掛けたオーディエンスが一気に加熱する。櫻井が去った後も、「忘却の空」や「少年」といった浸透度抜群の楽曲の連射に、そうした熱が冷めることはなかった。

 以降、個々の出演者たちのパフォーマンスについて詳しく具体的に報告することは、この場では避けておく。これから皆さんの目に届くことになる、さまざまな音楽誌などの記事をお楽しみいただきたいところだ。が、とにかく驚かされたのは進行があまりにもスムーズだったこと。どの出演者もあらかじめ決まっている持ち時間の枠のなかで密度濃いライヴを展開し、10分ほどの転換でステージの“主”がめまぐるしく変わっていく。そうした流れは、結果、一度も大きく乱れることがなかった。大雨と強風にさらされた状況からの復旧作業の見事さもさることながら、プロフェッショナルなスタッフたちによるセット・チェンジの完璧さもまた『ON PARADE』を成功に導くことになった重要な要因のひとつと言えるはずだ。

 もちろん、各出演者たちの熱演ぶりについては言うまでもない。速射砲のように楽曲を炸裂させ続けたBALZAC、RUNAWAY BOYS(というかCOALTAR OF THE DEEPERS featuring kyo)の超アグレッシヴな演奏ぶり、「PHYSICAL NEUROSE」で今井寿との“夢の共演”を実現させたAGE of PUNK、過剰なくらいカラフルで破天荒なパフォーマンスを披露してくれたATTACK HAUS……。誰もが各々の特性を存分すぎるほど発揮していた。

 言うまでもなく、それは、遠藤ミチロウ率いるM.J.Q(『TOUR PARADE』の福岡公演に続き「ワルシャワの幻想」での今井寿との共演が実現)、即興性の高い演奏で持ち時間をたった1曲で使い切ってしまったTHEATRE BROOK、音楽的興奮と人間的メッセージの両方を届けてくれた土屋昌巳、重厚なサウンドと軽妙なお喋りを楽しませてくれた“日本一、腰の低いバンド”ことabingdon boys schoolについても同じことである。

 ようやく日が暮れかかってきた頃、会場の敷地を埋め尽くした1万3,000人のオーディエンスの前に姿を見せたのは、Rally。彼らの正真正銘の“初ライヴ”が、BUCK-TICKの20周年に花を添えることになった。さらにJが放火魔の本領を発揮するかのように強靭なバンド・サウンドで空気を塗りつぶすと、続いてはMCUの登場。話は前後するが、Rallyのステージにも“飛び入り”した彼は、この後、BUCK-TICKの演奏中にも「スピード」での共演を果たしている。

 そして、横浜の夜景を背にしながらKEN ISHIIが一帯を揺らすと、ついに午後8時10分、BUCK-TICKの5人が登場。オープニングは、そのKEN ISHIIとの合体による「Baby, I want you.」。あのイントロが聴こえてきてから、アンコールに応えての「スピード」と「JUPITER」を演奏し終えて彼らがステージから完全に姿を消すまでの時間は、50分にも満たなかった。かならずしも20年間を総括できる長さではないし、まだまだ聴き足りない気がしたのも事実だ。が、少なくとも僕の肉眼でとらえた限りでは、その場にいた誰もが満足そうな表情をしていた。間違ってもそれは、夏の終わりを告げるかのように夜空に炸裂した、大量の花火の効果ばかりではないだろう。

 このようなオフィシャルのウェブサイト内の原稿で褒めちぎるのもどうかとは思うが、実際、素晴らしいフェスだった。まさにBUCK-TICKだからこそ実現し得たものであり、BUCK-TICKだからこそ集結させることができた“あり得ないラインナップ”であり、そんな出演者たちの抱くリスペクトとプライドの両方が有効に機能したからこそ、僕は時間の経過も忘れて最初から最後までたっぷりと楽しむことができたのだと思う。

 ご存知の通り、このイベントの正式タイトルは『BUCK-TICK FEST 2007 ON PARADE』である。“2007”と銘打たれているということは、“2008”もあるのかもしれないし、これからずっと定例化していくことになるのかもしれない。もちろんそれにはたくさんの困難がつきまとうことになるし、軽々しくこんなことを口にすべきでないこともわかってはいる。が、敢えて最後に言っておきたい。是非来年も、再来年も、高らかなファンファーレとともににぎやかなパレードを続けて欲しい、と。少なくともBUCK-TICKには「こんなにも素晴らしいことを、始めてしまった責任」があるはずなのだから。

 そして最後の最後にもうひとつだけ。皆さん、次回は『BUCK-TICK TOUR 2007“天使のリボルバー”』でお会いしましょう。


text :増田勇一